薄利多売の商売である書籍販売は、とうていそんなにおいしい投資先だとは思えないのだが、2009年の暮れからバーンズ&ノーブルの株を買いあさる人物が現れた。全国展開するグルメースーパーマーケットの先駆けである「ホールブース」などのM&Aで一代の富を築いたロンーバークルという投資家だ。彼はクリントン夫妻と懇意で、アルーゴアのエコTV局に出資したり、アイスホッケーチームのオーナーになったり、と世間の注目を集めることが好きなようだが、何を意図しての敵対的買収なのか、地味な書籍ビジネスに手を出してきた。これに対する処置として、バーンズ&ノーブルの筆頭株主であるレオナルドーリッジオは、バークルの持ち株のシェアを下げようと「ポイズンピル」をしかけたり、自分を支持する投資グループを探してそこに加わろうとしているが、これが日本のニュースで「バーンズ&ノーブルが身売りする」と解釈され、物議を醸したのは記憶に新しい。おそらく「デジタルカタログの出現で既存の本屋が潰れる」という構図を描きたかったのだろうが、オンラインビジネスにしても、デジタルカタログにしても、早くから取り組みを見せているバーンズ&ノーブルがそう簡単に消えていくとは誰も考えていない。バーンズ&ノーブルのように紙の本を中心とする書店チェーンが、デジタルカタログをも扱う新しいビジネスに生まれ変わるにはそれなりに時間もかかるだろうが、四半期ごとの決算で株価が揺れ、外部の投資家からあれこれ言われるよりは、リッジオは自分が出資してでもバーンズ&ノーブルを守り続けていくだろう。