新ルールによって顧客が賢くなるといわれているが、その中身は大きく二つに分類される。一つは従来の枠組みを越えた低価格商品による市場競争が生まれる、つまり、価格破壊が起こるということである。新規参入者は特定の顧客、あるいは特定の販売方法にしばり込むことで、低コストで事業を行うことができる。例えば、ドイツの既存保険会社(アリアンツなど)と、新規参入者(コスモス社などのダイレクト販売業者)との価格は、定期保険で約六○%の格差が生じていた。また、英国ダイレクトライン社の保険料は、故八国市場における他社の平均を約二〇%下回っている。これらの新規参入者が、その低コストをテコにして安い値段で特定の顧客に保険を提示してくると、顧客側は、自分の特性が安い価格の保険に適合しているのかどうかで、メリットを得られるかもしれないと考えはじめる。そこから、自分がいま入っている保険はどうなのかを見直すようになり、新しいルールの中で、まず価格面において顧客の「保険」商品に対する見方が厳しくなってくる。次には、サービス面での要求の高まりである。価格の安い新規参入者の商品に対して、既存の保険会社はサービス内容で対抗しようとする。そうなると、価格は安いがサービス内容についてはそこそこという商品と、価格は多少高くてもすべてお任せできるようなサービス内容の商品との間で、顧客は、自分の価値観に従って自分なりの判断で商品を選ぶようになる。新規参入者は通常、短期間に顧客に対して訴求できる差別化を重視するので、まずは価格面での差別化を図る傾向がある。そして、その波及効果で既存の保険会社も価格を下げるようになる。また、既存保険会社は、これらの動きに対抗するために、顧客に対して「新規参入者の保険は、価格は安いがサービスに限界がある」というメッセージとともに、「自社商品は価格面では高いかもしれないが、サービス網が充実している」といった提案をする。結果的には、顧客がこうした一連の動きを経験することで、自分が買いたい商品に対する適切な対価はいくらなのかということをより鮮明に認識するようになる。
[参考情報}
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