七、八年前、私の書籍で東京大学工学部の原島博教授に対談をお願いしたことがありました。原島教授は電子情報工学が専門で、テレビ電話の研究がきっかけで人の顔に関心をもつようになり、一九九五年に「日本顔学会」を設立された先生です。私もこの学会でお世話になって以来、親しくさせていただいています。「顔」というのは、メイクの技術や知識だけでなく、医学、薬学、心理学、工学など、さまざまなジャンルの学問とかかわっているのです。おもしろいでしょう?この対談で原島教授は、ある実験の話をしてくださいました。まず、実験の対象となる女性の顔に、CG(コンピューターグラフィック)の技術を使って、その人の好きな女優の顔を10パーセントずつ加えていき、いくっかのパターンの顔の写真を作ります。また逆に、好きな女優の顔にその女性の顔をI〇パーセントずつ加えていった写真も作ります。こうして何パターンもできた顔写真を、まぜこぜにして机の上に並べ、本当の自分の顔を選んでもらうと、その女性は、好きな女優の顔がI〇パーセント加わった写真を「これが私です」と言って選んだ、というのです。つまり、人は自分の顔を、実物より。ちょっとよいめ”に見ているわけです。つた写真が、その女性の顔に思えたそうです。原島教授は、「顔は、人と人との間でつくられるということです。それが生きている顔なんです」とおっしゃいました。どういうことかというと、その女性は、実験中に原島教授と楽しく会話をしたことで、初めは無表情だった顔にイキイキした表情が出てきたので、原島教授が受ける印象までが、。ちょっとよいめやの顔になったわけです。これは特別なことではなく、みなさんも経験しているはずですよ。たとえば、学生証や履歴書に貼るために「三分間写真」を撮っだ時、いつもの自分の顔よりも「暗い、無表情、イケてない」と感じたことはありませんか?・でも、友だちや彼といっしょに写真を撮った時には、「私って、こんなに加わいかった?」と思うほどイキイキとして、きれいだったりします。それは、一人で写真を撮る時と違って、あなたと相手の気持ちが顔にプラスされるからなんです。これが、「顔は、人と人との問でつくられる」ということです。イキイキとして魅力的な表情は、人とのコミュニケーションのなかでつくられるのです。
[参考]
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